家族構成 ご夫婦
施工エリア 愛知県名古屋市
建物概要 二階建て
敷地面積 55坪~
延床面積 30~35坪
かつて自身が暮らした街で、両親が残したいと願った土地にふたたび暮らすことを決意した奥さま。住まいのあちこちに置かれた家具や調度品は、代々受け継がれてきた貴重なものばかりです。
由緒あるお庭を中心に、光や風の恵みを浴びてリセットする毎日。その豊かな時間と空間をふたりだけのものにせず、仲間たちと共有しつないでいく、そんな憧れの暮らしをご紹介します。

目次

    一緒に年を重ねていく家

    「私たちが家を建てるなんて想像もしていませんでした」そう話す奥さまは、ご両親から相続された土地に住まいを建てられました。
    ご結婚30年を迎えたおふたりですが、ご主人は約10年前から単身赴任で横浜市へ。平日はそれぞれの場所で忙しい日々を送り、週末はこの家でご一緒に過ごされています。

    ネイエとの出会いは、奈良県にすてきな新築を建てられたご友人からのひと言。「名古屋にはネイエがあるから良いわね。」その言葉をきっかけに、ご夫婦で初めてモデルハウスへと足を運ばれたそうです。

    しかし、右も左もわからないまま各社の話を聞き、若年層の家族を対象にした住居や、希望に沿わないプランの提案に圧倒されてしまったおふたり。ネイエのモデルハウスにたどり着いた時には、心も身体もくたくたに疲れていらっしゃいました。

    「落ち着いた暮らしがしたいと考えていたので、ネイエがつくり出す”さりげない和”に安心できました」とご主人。「私たちの若い頃は、ヨーロピアンやログハウスといったテーマ性のある家が流行っていたので、新しい感覚のなかで和が表現できる今が羨ましいですね」と奥さま。

    人生経験を重ねた今だからこそ、静かな大人の住まいをご希望されていました。

    お母さまから託された願い

    もともとこの場所に建っていたのは、奥さまが幼少期を過ごされた立派なお庭の広い家。ひとりで暮らすお母さまのためにと、奥さまは数年前からふたたびこの地へ移り住んでいました。

    「母は、庭をとても大切にしていました。」しかし、当時の奥さまは仕事と介護とで心に余裕がなく、使命感だけで朝晩の水やりをされていたそうです。

    その後、お母さまとのお別れという大きな喪失感と慌ただしさが押し寄せる日々に。毎日、家を片付けながらいつもの水やりをしているうち、ふと「この庭を残してあげたい」そんな想いが湧き上がりました。

    そして今、ダイニングからの風景を独占しているのは、いつでも家族の中心にあったお庭。

    昼間は大きな窓の外に季節のうつろいを美しく魅せる風景が広がり、夜になると街灯に照らされた植物たちが、障子一面に見事な影絵をつくりだしています。

    深い軒のおかげで、降っても晴れても大きく窓を開けて過ごされているそう。手水鉢(ちょうずばち)に水浴びにくる鳥をながめたり、風でゆれる木々の音に耳をかたむけたり、昨日まで咲いていなかった花を見つけたりと、自然からの新鮮な気づきに包まれる毎日です。

    「もとの家を取り壊すときには申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、両親が残してくれた塀や庭を守ることができて本当に感謝しています」と奥さま。鎖樋(くさりとい)の下には、屋根瓦が再利用されています。

    想像以上の、もうひとつの庭

    玄関を入ってまっさきに出迎えてくれるのが、天をくりぬいたような中庭。ここから差し込む陽の光は足元にやわらかな影をつくり、月が照らす光は隣の和室を特別な空間へと演出しています。

    あえてカーテンをつけなかったのもおふたりの選択。「疲れて帰ってきてここに光が満ちていると ”あぁ、大丈夫だな” と立ち返ることができるんです。」

    この中庭と、階段途中にある窓を開けておくと、高低差換気のおかげで新鮮な風が住まいを通り抜けていきます。

    あまりにも心地良く、2階の寝室ではなく和室で眠るようになったのは嬉しい誤算でした。

    星空を見ながら眠りにつき、朝日とともに目覚め。奥さまは毎朝必ず寝具を仕舞い、身支度をしたらさっと掃除機をかけ、朝食後はお気に入りの場所でお抹茶をたしなむのが日課だそうです。

    何気ない場所にこそある豊かさ

    設計打ち合わせの際、設計士たちが細かな納まりに時間を費やしていたのを不思議がっていたおふたり。「住んでみてわかりました。生活のなかで意識せず目に入る線の美しさが、見るたびに豊かさを積み重ねてくれるんですね。」

    自然のものを積極的に取り入れ、テレビなどの娯楽家電のない「旅するように暮らす」ことを願うご夫妻。物理的にも心理的にも抱えすぎず、常に身軽でいることを、おふたり共に心がけているようです。

    「この家に住んでからは旅行に行かなくなったね」「外食も行ってないね」と、顔を見合わせて笑います。旅先で感じていた「特別」が、今は住まいの随所にあるようです。

    角に置かれた箪笥(たんす)やフロアランプは、江戸時代から大切に受け継がれてきたものだそう。

    何気なく掛けられた壁飾りも、捨てられそうになっていたザルをリメイク。新しい暮らしに散りばめられた記憶のかけらたちが、シンプルながらも尊さを醸しだしています。

    受け継いだものを、人や暮らしにつなげていく

    以前から、定期的に料理会やお茶会を開催されている奥さま。

    そのため、保健所許可に適合した広いステンレスキッチンを配し、1階はゲストが自由に行き来できるオープンスペースになっています。

    時間帯や過ごし方に合わせて、ふすまの閉め方がアレンジできるのもおもてなしのひとつ。

    イベントは、各専門分野に造詣が深いゲストとともに毎回趣向を凝らした内容を企画。

    息を飲むほど繊細なお料理や和菓子が、受け継がれたお盆や重箱、茶器などを利用して提供されています。

    庭のツバキはつばき餅に、黒文字の木は紅茶に、金木犀やすみれ、青梅はシロップ漬けにと余すところがありません。

    また、調理で残った食材や庭の落ち葉はコンポストでリサイクルされ、また自然へと還っていきます。おふたりの周りは、心から必要だと感じたものだけに満たされ、物も空気も人も、心地良くめぐっているようです。

    「食べている姿を見るのが、好きなんです。」と、温かい表情で微笑む奥さま。

    決して飾り立てず、けれど上質な暮らし。おふたりはこの場所で新たな軌跡を刻んでいます。

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