家族構成 | ご夫婦・お子さま二人 |
---|---|
施工エリア | 名古屋市 |
建物概要 | 二階建て |
敷地面積 | ~40坪 |
延床面積 | ~30坪 |
古くから受け継がれる日本文化を大切にしたい—。決して飾り立てず、しかし上品さを感じる住まいは、そんなご夫婦の想いを映すように奥ゆかしく佇んでいます。
目次
コンセプトは、小さく豊かに。
以前は、マンションをリノベーションして住んでおられたお施主さま。家を建てるにあたっては、立地を最優先に考え、大きさにはこだわらなかったそう。選んだのは、20坪の土地でした。
「予算との兼ね合いもあり、当初は2.5階建てで考えていたんです。その分、寝室は寝るだけの場所といった、メリハリをつけた家にしようと。」
しかし、なかなか理想のプランには出会えなかったとのこと。唯一琴線に触れたのが、ネイエの提案だったといいます。
「他社からは軒並み、『この敷地では、3階建てじゃないと住めませんよ』と言われる中、ネイエは2階建てのプランを考えてくださって。こちらの想定以上の提案をつくり上げる設計力に驚きました。」
ネイエからの提案を受け、この場所で“小さく豊かに暮らす”という覚悟ができたのだとか。
「それまでは、広い土地や高価なモノが豊かという価値観がありました。でも、小さい空間も決して悪くないぞと。これまでの価値観にとらわれない暮らしや豊かさを見出したいと思いました。」
家族のためだけではなく、おもてなしも前提に。
友人を招いてお食事を楽しむことが多いお施主さま。「自信を持っておもてなしができる家にしたかった」というお言葉どおり、玄関から特別な空間が広がります。
「玄関は自分たちのためではなく、来客のことを第一に考えました。家にお邪魔するというよりは、隠れ家レストランに来たような雰囲気にしたかったんです。」
表札やインターホン、ドアクローザーは見えないように配慮。造作の玄関扉は、光の差し込み方にこだわり、格子の幅を何度も調整しました。ご主人が「帰ってくる度に惚れ惚れします」とおっしゃるほど、納得の出来栄えです。
生活感を出さないために、玄関の正面には靴箱も兼ねた納戸を用意。「小さな敷地ですが、意外と収納は充実しているんです。急な来客でもモノをしまうのに困ったことはありません。」
ここにも、小さく豊かに暮らすための工夫が垣間見えました。
食を中心に家族がつながる。
2階は、“食”がなによりの趣味というご夫婦に合わせ、キッチンダイニングを中心に設計しています。
「我が家は食事の取り方が独特で。すべての料理をつくって並べてから食べるのではなく、できたものから次々と出して食べていくんです。」
このお食事スタイルに合わせ、特徴的なシーザーストーンのテーブルは、片方で食事を取りながら、もう片方で調理ができるように幅を取っています。ご主人はいつも、立って食事をされるのだとか。「いつの間にか慣れてしまいました」と笑います。
キッチンの通路幅は、複数人が同時に入ってもぶつからない広さで設計。「キッチンが生活スペースに溶け込んでいるので、子どもたちが家事に参加しやすいんです。よく一緒に料理を楽しんでいます」とお話いただきました。
また、家族がキッチン、ダイニング、小上がりのどこにいても目線が合うように高さを計算。それぞれが想い想いの過ごし方をしていても、自然とコミュニケーションが取れる空間としました。
「私はキッチン、妻はダイニングが指定席。子どもたちは小上がりでタブレットを見たり、花札をしたりして遊んでいます。晩酌時には、子どもがご飯をつまみにくることも。」
小上がりに大きく取った窓は、雪見障子に。景色を一番きれいに切り取れるよう、微調整を重ねたそう。「春は桜が満開になるなど、周りの植物や光の入り方から季節を感じられます。」
日本文化を大切にするお施主さまだからこそ、日本ならではの四季を感じてほしいと、設計士がこだわり抜いた部分です。
そして、小上がりの両端にも秘密が。一見なにもありませんが、片側がご主人のお仕事用の書斎で、反対側は収納スペース。全体の雰囲気を壊さず、便利に暮らすための工夫がここにもなされています。
場所の役割は、あえて決めない。
一方で、子ども部屋は究極にシンプル。就寝スペースのみを確保したつくりです。
「この敷地でどう住まうかを考えたときに、“ここはこれをする場所”と決めなくてもいいと思いまして。たとえば、勉強は必ずしも子ども部屋でなくても、二階のダイニングでできるわけです。そうすると、小さくても余裕を持って暮らすことができるなと。」
その想いは、奥さまがお茶を、お子さまが生け花を楽しむ茶室にも表れていました。「妻の要望で設けたのですが、夏は寝室としても使っています。」
そのほかに、二階で寝られることもあるなど、寝室を決めず季節に合わせて就寝場所を変えているそうです。
「以前住んでいたマンションは広かったのですが、“居場所”が少なく感じていました。そこから狭くなっているにも関わらず、過ごす場所が逆にすごく増えたのが新鮮な発見です。」
そうお話しされるように、ご主人は階段に座って外を眺めて過ごしたり、奥さまはキッチンの段差に腰かけたりと、お部屋以外にも居心地の良い場所がたくさんあるのだとか。さりげなく残した段差の設計も、この居場所の多さにつながっています。
素材を味わい、経年を愉しむ。
料理家の奥さまが常に意識をされているのは、“素材”そのものの味を活かすということ。家づくりにおいても同様に、“素材”が一つのキーワードになっています。
そのこだわりを最も感じられるのが、京都の和紙職人とともにつくり上げた茶室です。「流派にはこだわらず、現代の暮らしに合わせて設計をしてもらいました」と奥さまはおっしゃいます。
天然い草の畳で、ヘリは綿100%。お色味はきなりを選択しました。壁や地窓の障子に貼られているのは、職人による手すき和紙です。チリが残るその和紙からは、機械すきにはない温かみが感じられます。決して派手ではありませんが、素材の良さがたしかに活きる空間です。
家の外壁はモルタル、内壁はプラスターという下地材のみで、手塗りでの仕上げ。ムラを残したことで、独特の風合いを感じさせます。
床と小上がりはナラの床材。色味のバランスとコストパフォーマンスが良いため、設計士が提案しました。
ご主人に、お手入れについて伺ったところ「ほとんどなにもしていません」とのこと。「もちろん、時間が経つにつれて風合いは変わっていきますが、それも素材そのものの良さだと思うんです。無理に人の手を加えることなく、その変化を愉しんでいます。」
ところどころに残る汚れやキズ。まるで、家族が過ごした場所や時間を示す証のように、さまざま刻まれていました。
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